第2章 幼稚園児・別れ編 第4話 初恋の人との別れ

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第2章 幼稚園児・別れ編 第4話 初恋の人との別れ

 頭痛が治まらず、苦しんでいた俺であったが、いつの間にか気絶するかの様に眠ってしまっていた。  しかしある時、俺の身体に電気が走るような感覚が起こり、続いて頭だけではなく身体中に激痛が走る……  あまりに突然の出来事で俺は驚き目を覚ました……はずだった……    目を開けると俺の前には電車が止まっている。  それもいつも見る光景よりもかなり視界が低かった。  ん? どういう事だ?  俺は意外に驚く事はなく冷静でいたが、その冷静な時間は数秒で消えてしまう。  俺の目の前に……いや、少し見上げるとそこにはあの『つねちゃん』が俺に微笑みかけながら立っていた。 「つ……つねちゃん……?」  俺は、恐らく今までにないくらいの驚いた表情で『つねちゃん』と呼んだと思う。  しかし、そんな俺に対して『つねちゃん』は少し腰を低くして俺の頭を撫でながらこう言うのであった。 「あらぁぁ? 隆君、やっと先生の事を『つねちゃん』って呼んでくれたのね? 先生とっても嬉しいわ……。隆君、ありがとね……」  そ……そうだった……  俺は常々、『つねちゃん』から『先生の事、つねちゃんって呼んでね』って言われていたが、『恥ずかしがり屋』の俺は卒園式の日まで『つねちゃん』って言えなかったんだ……  多分、この場面……、駅のプラットホームでの最後のお別れの時も俺はモジモジしながら、結局、『つねちゃん』って呼べなかったんだった……  しかし何なんだ!? 一体、俺に何が起こったんだ!?  何故今このシーンなんだ!?  俺は数秒間で、この状況を把握しようと努力した。  そして俺が出した結論は、『今、俺はかなりリアルな夢を見ている』……    そうである。  そういう結論を出すのが当然だと俺は思った。  幼稚園児がそんなに色々と考えているなど知る由もない『つねちゃん』は俺の頭を再び撫でながら、優しい口調で話し出す。 「隆君……? 隆君が最後の最後に勇気を振り絞って、先生の事を『つねちゃん』って呼んでくれた事、先生凄く嬉しいし、凄く励みになったわ。だから次の幼稚園でも先生、頑張れると思う......。せ...先生に勇気を与えてくれて本当にありがとね……」  そう言ってもらった言葉に対して何も言い返せない俺を見て『つねちゃん』は俺が『キョトン』としている様に見えたのだろう。 「ご…ごめんね。隆君には先生の言っている事、少し難しすぎたかな? でもこれだけは覚えていて欲しい。 先生は隆君の事をいつまでも『大好き』だからね。 隆君が小学生になっても元気に、たくさん勉強して、たくさん遊んで、たくさんお友達が出来る事を願っているからね……」  俺は『つねちゃん』の言った言葉は全て理解している。  まぁ、当然だよな。  俺は『大人』なんだから……  しかし、当時、こんな会話を俺はしただろうか?  いや、していないはずだ。    もし、していたとしたら『つねちゃん』の……あの言葉を俺が忘れるはずがない。  『いつまでも大好きだから』……    そっ…そうだ!!  これは『夢』だった……    神様がこんな情けない俺を哀れと思い、夢の中だけでも『つねちゃん』に会わせてくれたんだ。    きっと少しだけ俺の願いを叶えてくれたんだ……と、俺は思うようにしよう。  だったら……これは夢なんだから……  俺が『つねちゃん』に本当に言いたかった事を……  言いたかった事を今ここで……  プオォォォォォォ――――――ンンッ 『まもなく~ 一番線より~ 〇〇行きの電車が~ 出発しま~す』  あっ!? 時間が無い!! 「それでは隆君もお母さんもお元気でいてくださいね……。短い間でしたがお世話になりました……」 「常谷先生、お世話になったのはウチの方ですから。先生の方こそお元気で頑張ってください」   『ドアが閉まりま~す……』  プシューッ シューーーー  二人の会話が終わり、電車のドアが閉まる寸前に俺は『つねちゃん』にこう叫んだ。 「つっ…つねちゃん、俺が大きくなったら、俺と結婚してくれ~っ!!」    プシュー 『発車しま~す……』    ブォォォォン ブォォォォン ブォォォォォン  俺は『つねちゃん』とのお別れをやり直す事が出来た。  例え、それが夢であったとしても……
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