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俺が死んで一か月目は、「あと五分、家を早く出ていれば……」「近道しようと思わなければ……」などと自分の選択を悔やんで泣きながら、自分が死んだ事実を受け入れるのに忙しかった。
二ヶ月目になると、家族・恋人・友人の幸せや、どうやったら足元の鎖から解き放たれて成仏できるのかそればかりを考えていた。生前はこの国の多数の人間がそうであるように、特定の宗教に染まらず、都合のいい時ばかり神や仏を頼ってきていた。そのせいかもしれない、とも考えたりもした。
そして三ヶ月目の今。飽きた。この場から動けないし、誰にも見えないから、ずーーっと自分の頭の中でグルグルグルグル考え続けて、毎日毎日高校生の飛び降り自殺の巻き添えになって、アスファルトに後頭部をぶつけ続けるのも、全部飽きた。あいつとは今まで一回もしゃべったことないが、もう我慢できねぇ。一回ぐらい文句言ったっていいはずだ。
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