0人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食を済ませ、家を出た。
遥斗の家は住宅街のど真ん中にある。朝は、出勤する人たちでにぎわっている……はずだった。
道路に一歩踏み出した遥斗は、すぐに違和感に気がついた。
誰も、いないのだ。
あと5分の二度寝など、正直何度もやっている。5分長く寝たところで、家を出る時間はそんなに変わらない。なのに、歩いている人も、自転車に乗っている人も誰もいない。犬の散歩をしている人も、庭で水やりや洗濯物を干す人さえも。
遥斗の背中を冷たいものが走る。
「なんで……」
心の中で思ったつもりが、つい口に出していた。またしても夢の光景と重なる。
いや、偶然だ。たまたま、誰もいない瞬間に出くわしただけだ。少し歩けば、誰かいるだろう。遥斗は、頭の中で自分に対してそうまくしたてる。
誰もいないなんて、ありえないのだから。
遥斗は、学校に向かって歩き出した。しかし、その足取りはだんだんと重くなった。
誰とも、すれ違わないのだ。
思わず足を止めた遥斗は、そんなはずはないと頭を強く横に振る。
大通りに出ても、誰もいないのだ。いつもなら、ひっきりなしに走っている車も1台も見当たらない。
恐怖に押しつぶされそうになった遥斗は、ある結論に至った。
これは、夢だと。
そうだ、これはまだ夢の中なんだ。こんなこと現実に起こるわけがない。ということは、自分はまだ寝ているのか?さすがにもう5分は経っているだろう。早く起きないと遅刻するぞ。
そう遥斗は自分に言い聞かせる。しかし、何も変化は起きない。遥斗は、焦りだす。
「起きろ、起きろよ、俺……起きろーーー!!!」
そこで、ふっと意識が途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!