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……遥斗は、ゆっくりと目を開けた。暗かった。頭上からアラームの音が聴こえる。布団にもぐっていたことを思い出し、身体を起こし、アラームを止める。
「はぁ……」
やはり夢だった。安堵の溜息をついた。
嫌な夢だ。これから、憂うつなテストだというのに。
時計を見ると、やはり5分しか経っていない。夢の中の5分、長すぎるだろ。そんなことを考えながら、身支度を済ませ、リビングへ行った。
誰もいなかった。まあ、そんな日もある。
朝食を済ませ、家を出ようとドアノブをつかんだところで、遥斗は一瞬ためらった。
「あれは、夢だ」
そう小さく呟き、勢いよくドアを開けた。
目の前に広がるいつもの住宅街には、誰も、いなかった。
遥斗は、その場に崩れ落ちた。
不気味なくらい静寂な町並みを目にして、歩き回らなくても遥斗にはわかった。また、誰もいないのだと。
これも夢か?それとも現実なのか?現実だとしたら、あの5分で何があったんだ?ありえない。自分が二度寝した5分間で世界が変わってしまうなんてありえない。それじゃあ、これは夢か。夢なんだな。夢なら、もう起きなきゃ。テストに遅れちゃう……
遥斗は、玄関先でひざをついたまま、ブツブツとつぶやき続ける。
そして、また、意識が途切れた。
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