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「あと5分」
「あと5分~」
遥斗は、けたたましく鳴るアラームを止めながら、その合間にリビングの方から聞こえてきた母親の声に寝ぼけた声で答える。そのまま、すべてをシャットアウトするように頭を布団まで被る。
しかしその直後、遥斗の部屋の扉1枚を隔てたすぐ近くから母親の声が聞こえてきた。
「遥斗、今日テストでしょ。さっさと起きなさい!」
「あと5分~」
遥斗は、さらに深く布団にもぐった。今日、テストがあることなど、遥斗は百も承知だった。昨夜、そのための勉強で遅くまで起きていたのだ。
「あんた、また一夜漬けしたの?普段から勉強してればそんなことにならないのよ!」
母親の言うことはもっともである。そんなことはわかっているが、勉強をしなかった過去はもうどうにもならない。どうにもならない中での最終手段の一夜漬けだったのだ。
……眠気に負け、結局午前3時過ぎには布団に倒れこんだから、一夜漬けと言えるほどもしていないかもしれないが。
そんなことをまどろみの中で思っていた遥斗に最終通告が与えられた。
「どうなってもしらないわよ!」
母親の足音が遠ざかる。もう起こしに来ないぞという脅しだろう。そんな脅しに遥斗は屈しない。なぜなら、5分後にアラームのスヌーズ機能が発動することはわかっているからだ。
遥斗は、5分間の浅い眠りについた。二度寝というのはどうしてこうも幸福な気持ちになるのだろうかと思いながら……。
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