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第十五夜 宿直室
これは、父が体験したお話です。
私の父は仕事でガスタンクの管理をする事があり、数日毎に管理者が泊まり込みで管理をするというものでした。
その泊まり込みをする部屋を宿直室と呼び、そこにたまに家族で一緒に泊まる事がありました。
その時はまるで、旅行に来た時のようにワクワクしていたのを今でも覚えています。
その宿直室で起きた出来事を父が話してくれました。
ある日父が一人で宿直室にいる時の事です。
夜も遅くなりそろそろ寝ようとしていた時でした。
少し離れた入口の扉のドアノブが突然、
「ガチャガチャガチャガチャガチャ!!」
と静かな廊下に響き渡りました。
父は何だろうと思い、入口の方に向かい扉を開けましたが、そこには誰もいませんでした。
父はおかしいなと思いつつも部屋に戻りました。
しばらくの間は何も起きず、電気を消し眠ろうとした時、
「・・・・・カッ・・・チャッ!」
と音がしたそうです。
「誰か鍵開けたのか!?」
そう思いすぐに飛び起き、父は扉へと向かいました。
しかし扉の鍵は開いておらず、特に変わった様子もありませんでした。
(これは本当におかしい・・・。)
そう思いながら、少し鳥肌がたちました。
しばらくの間眠れなくなり、気持ちを落ち着かせる為にお茶を沸かし、テレビを付けてタバコを吸っていた時でした。
「ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ?・・・・」
明らかに誰かが宿直室の前の廊下を走っていく足音が聞こえました。
瞬時に父は理解したそうです。
(これは人じゃない!!)
父はとっさに、
「誰だ!!出て行いけ!」
と叫んだそうです。
当然周りはしーーんと静まり返っています。
父は、
(もう早く寝よう。)
と思い、急いで電気を消して布団の中に入り目を閉じました。
すると消したはずのテレビが付き、一定の間隔でチャンネルが切り替わっていきました。
父は、
「いい加減にしろ!もうやめろー!」
そう叫ぶとテレビがプツリと切れ、暗闇の中、父の耳元で、
「ここ、僕の家なのに・・・・。」
男の子の声が聞こえ、父が気付いた時にはもう朝になっていたとの事でした。
終わり。
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