第二十一夜 見てる

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第二十一夜 見てる

これは、私の会社の同僚が中学生の時に修学旅行で体験したお話です。 仮名をかずきとします。 かずきは修学旅行は京都だったそうです。 一日目は全員で歴史的建造物を見に行ったり観光をして、2日目は 各グループで自由行動を行い、3日目に帰宅という流れだそうです。 楽しみにしていたかずきでしたが、宿に到着し少し不安を抱き始めました。 建物自体は古いが特に変わった様子もなく、旅館の人達もとても明るく 良い人達なのですが、どこか怖い感じがしたそうです。 夜になり夜食を食べ、みんなで大浴場へと向かいました。 その途中にある一つだけ扉の色が違う部屋がふと気になったそうです。 (なんでこの部屋だけ他と違うだろう・・・。) 「どうしたかずき??」 仲間に呼ばれ仲間のもとへ急いで向かい、その後は特にあの部屋の事を 気にすることはなかったそうです。 就寝時間が近くなっていたが、他の部屋の仲間たちもかずきのいる部屋に 集まり電気を消しながら怖い話をしていたそうです。 そしてかずきが話す番となったが特に怖い話を知らないかずきはさっき 見た部屋の話を始めました。 すると思いのほか興味をもった仲間たちがその部屋を見に行こうぜと言い出しました。 「いや、やめとけって・・・。先生にも見つかったらやばいだろ?」 と止めたが、行く気になっている仲間達は止まらず結局皆で行く事になりました。 先生に見つからない様に、皆で手分けをしながら目的地へ向かうのは まるでスパイの様でワクワクしていたらしいです。 そしてようやく目的地にたどり着きました。 全員が息をのみ、その中の一人が、 「開けるぞ!」 といい扉を開けました。 中は少しかび臭い匂いがし、周りは真っ暗だったそうです。 全員で中に入るとその部屋はかなり広く、どんどん奥に行く事が できたそうです。 「おい、なんだこの部屋・・・なんかやばくね?」 と一人の仲間が言い出し、その部屋を出ようとしたその時でした。 「おい・・・待てよ・・・」 と仲間の一人が言い出し、 「なんだ?どうした?」 と皆が振り向くと、 「あそこにさ・・・・何かいる感じがするんだけど・・・?」 というと皆でその仲間に近づきました。 「どこだよ?」 「ほら・・・あそこ・・・」 と仲間が指を指したそうです。 その方向を皆でみると確かになにかがゆらゆらと動いている様な黒い影 が全員見えたそうです。 「おい・・・なんだよあれ・・・誰かなんか灯りないの?」 というと、思い出したかのように仲間がポケットから携帯ストラップの 小型ライトを取り出しその方向へ光を向けた途端、その場にいた全員が 凍りつきました。 そこには、全身焼けた様な真っ黒な体に、目だけは真っ白の人が立って いて、かずき達の方をじっと見ていたそうです。 「うわーーーー!!」 一斉にその部屋を飛び出し、全員がまたかずきの部屋へ走っていきました。 部屋に戻ると全員が顔を見合わせ、 「おい何だよあれ・・・」 と呟き顔が真っ青になっていたそうです。 さっきの叫び声を聞いた先生が慌ててやってきて、 「お前たち何やってるんだ!!全員各部屋に戻れ!」 と言われ全員でさっきみた話をするも先生は信じてはくれなかったそうです。 しかし次の日の朝起きると、昨日注意した先生の姿を見なかったので、他の先生にどうしたのか聞いたそうです。 すると、 「〇〇先生今朝病院に運ばれました。」 とそれだけ言われたそうです。 後日かずきが聞いた話では、実はかずき達と同様にあの部屋が気になっていた女子がいたそうで、その女子達はかずき達が見た次の日の朝にその扉を開けたそうです。 そしてその扉の中には昨日かずき達を注意した先生が倒れており、その姿を見つけた女子が他の先生に伝えたそうです。 その女子曰く、先生の目は白目を向きながら、ひたすら小さな声で 「あつい・・・あつい・・・あつい・・・」 とつぶやいていたそうです。 更に聞いた話では、その旅館ではかなり昔に一度火事があり、そしてその 旅館に泊まっていた男性が焼身してしまったという事を聞き、きっとあれは その人だったんだとかずきは思ったそうです。 恐らくあの先生は、かずき達の話を聞いた後に、興味を持ってその部屋に行ったんじゃないかとかずきは僕にこの話を教えてくれました。 終わり。
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