第九夜 消えない手形

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第九夜 消えない手形

これは筆者が小学3年生くらいの時に家族で体験したお話しです。 お風呂に順番に入り、1人が上がったら次の人が入るというのが我が家の お風呂のルールがありました。 ある日の夜に突然お風呂から上がって来た姉が、 「お風呂の扉にさ、手形が付いてるんだけどあれ誰が付けたの?」 と聞いて来ましたが誰もわかりませんでした。 その時は誰かが遊び半分で付けたんだろうとニヤニヤしながら、 「お前がやったんだろ!」 みたいな感じになっていました。 次にお風呂に入った兄が、 「確かにあったわ。水で流したから消えたと思うよ。」 と言い次に私が入る番になりました。 恐る恐る風呂場に行くと、手形は無くなっていました。 安心しお風呂に浸かり髪を洗い終わった後に鏡を見た瞬間に 鳥肌が立ちました。 そこに無かったはずの手形が確かに付いていました。 怖くなった私は急いでお風呂を上がり、その事を家族に言いました。 「手の油か何かの汚れが取れてなくて、曇ってまた出てきたんだろ。」 みたいな事を言い、その時はそのまま終わりました。 ですが、翌日もその翌日も手形は消える事なく、ずっとはっきりと 残った状態でした。 いい加減に嫌な気持ちになった母は、その手形を洗おうとしました。 その日の夕方に私は遊びから帰って来ると、母は心配そうな顔をしながら、 「あの手形・・・・外から拭いても中から拭いても取れないのよ・・・」 いい加減怖くなった私達は、兄弟や家族で一緒にお風呂に入るように なっていました。 やがてある日、手形の事を殆ど忘れかけてた日にふと思い出し、 見てみると手形はキレイに無くなっていました。 それこそ不思議に思っていたその夜に、衝撃が走りました。 脱衣所の横の外に繋がる窓の右上に、あの手形と全く同じ形の 手形がありました。 あの手形の正体は何だったのか。 今は家を新しく建て直してからは、そんな気配は一切ありません。 第九夜 終わり。
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