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「……っごめんっ、」
しゃくり上げながら、ミチルは顔を下げた。
掌で涙を拭う。
「どうした?ミチル…」
慌てて鞄からハンカチを取り、小刻みに震えるミチルの手元に渡す。
それをぎゅっと握り締めたミチルは、そっと目元にあてた。
静かに、嗚咽が漏れ聞こえる。
やがて、込み上げる波も収まったのか、ミチルの体の震えは止まった。
「ミチル、何かあった…?」
じっとミチルを見つめる。
テーブルでは、アイスコーヒーのグラスの底の周りに、滴の輪ができていた。
夕日が傾き、温度の変化を感じる。
やがて、まだ涙の絡んだ声で、ミチルが呟いた。
「…………ときどき、暴力を、受けるの。」
ーーその瞬間、体中の血が沸いた。
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