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ふらつくミチルを家まで送り届けた後、私は険しい顔つきになっているのを、自分でも感じていた。 男が、女を、幸せにするんじゃなかったのか。 女では、女を、幸せにできないんじゃなかったのか。 奥歯を噛み締める。 拳を握り締める。 話が違う。 全く、違う。 ーなぜ、ミチルの手を放したんだ? ーなぜ、別れたくないと言わなかったのか? 彼女が別れたいと言ったから? みっともない自分が恥ずかしかったから? 苛立ちが募って爆発しそうになって、乱暴に煙草を取り出した。 ライターを無意味にカチカチ鳴らし、忙しなく吸った。 見上げた先には、細く尖った月が浮かび、紺色の空の眼が閉じられているようだった。
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