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俯き泣きそうな細い月。
今日のミチルの瞳を思い出す。
ーそれなら、女でも良かったんじゃないか…。
急に、体が震えた。
動揺の波が、私を包んだ。
今、一度手放してしまったミチルの指先が見える。
掴める位置にいる。
“女”であることを恨み、散々傷つけ合ったのに、私の中にミチルの場所はこんなにあったのか。
「私はまだ、ミチルが好き…」
分からなかった。
自分の感情がコントロールできない。
煙草を深く吸い、動揺を抑える。
気付いてはいけないことに、私は気付いてしまったのかもしれない。
夜風にゆるく煙が揺れた。
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