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肌色の指先で、髪を耳にかきあげる。
ピアスが露になった。
「…行こっか。」
さっとミラーから視線を外し、実物の紗有美に声を掛ける。
つばひろの麦藁帽子を被りながら、紗有美が頷く。
車を降り、後部座席に積んだバスケットを持ち出して、紗有美に声を掛ける。
外に出た紗有美の長いボーダーワンピースが風にそよいだ。
「風が強いね、」
帽子を押さえた紗有美が、空を眩しそうに見上げた。
雲ひとつない空に、紗有美の声が吸い込まれる。
「でも、いい天気。」
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