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からん、とミネラルウォーターのグラスの氷が溶ける。
再び、電子音が鳴った。
大きな電話のマークが画面に表れる。
私は通話ボタンを押した。
「もしもし、」
『もしもし、恭子?』
「うん」
『遅くにごめん。』
「大丈夫。それより…何かあったんでしょ?」
『……鋭いね、』
「当たり前でしょう。長い付き合いなんだから。」
『さすが』
あはは、と笑い声を漏らした倫世は、そのままふーっと息をこぼした。
「…悩み事?」
『というか、』
「というか?」
『…実は、こないだ海に行った日の夜、紗有美から電話があって、』
がくんと心臓が跳ねた。
さーっと、血の流れる音がする。
下に、下に。
“その先は、聞いてはいけない”
誰かが、警告する。
囁く。
私はぎゅっと目を閉じた。
帰り道、紗有美を励ました自分の姿が、瞼の裏に白く浮かび上がる。
『……紗有美に告白された。』
冷静な倫世の声が、私の心を貫いた。
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