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「あっ、あっ…ゃぁんっ…!!!」
感じる…
都貴さんの優しくてとろけるような甘い匂い。
3月。
今日は卒業式の日。
都貴さんが高校から巣立っていく。
式の後、私は花束を抱えて保健室にいた。
校医の長谷部先生は今日も不在だった。
することがなく暇を持て余していた私は、窓際に立った。
「んー、都貴さぁん…。暇だよ…。」
窓を開け、校庭に目をやる。
あちこちに人だかりがある。
それぞれの顔には、喜びや淋しさが浮かんでいる。
ネクタイやリボンの争奪戦もあっている。
私は視線を駐輪場に移した。
桜の花びらが散り、ふわりふわりと駐輪場の屋根に積もる。
春の陽光が目に眩しい。
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