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「そんな時…景に逢った。」
顎先まで伝ってきた綺麗な涙粒がぽとりと、私の頬にあたる。
じわりと広がり、頬を濡らし、やがて乾いていく。
「逢いましたっけ?」
こんなに綺麗な人だったら覚えているはず。
なのに私の記憶の中に都貴さんの姿はない。
「一方的に逢ったから。」
そこで都貴さんは私の方を向いた。
涙粒がぽたぽたっと顔にかかる。
それを都貴さんが優しく拭ってくれた。
「去年の冬、私がここで勉強してたら、一人の女の子がやって来た。あの時だったみたいで、少し貧血気味だった。それに運悪く風邪も引いてた。」
顔に当たる都貴さんの白い指が気持ちいい。
思わず目を閉じた。
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