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「…それ以上言わないで。」
ひっそりと、それでいてきっぱりと緋水は告げた。
ー私を見ようともしなかった。
宙に止まった指が、行き先を探しあぐねて、軽く痙攣した。
綺麗な裸の背中は、もう触ることを許されない。
「………分かった。」
一言呟いた私は、ベッドから抜け出した。
床に散らした服を集め、袖を通す。
「……別れよう、なんて変だよね。私達にそんな関係なんてなかったんだもの。」
髪を束ね、鏡を覗く。
そこに映るのは、裸の背中。
緋水の綺麗な背中だけ。
「………大好きだったよ、緋水。」
鞄を持ち、玄関に向かう。
鍵を取出し、掌に載せる。
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