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「ここに置いていくね。」
玄関横のシューズボックスの上に鍵を載せる。
「………おやすみ、緋水。」
一度も振り返らず、ドアを閉めた。
外に出た瞬間、
私と緋水の全てが終わった。
不意に涙が溢れ出した。
苦しくて、苦しくて。
頭も体も心も、全てが軋みながら悲鳴をあげている。
「…ふっ、くっ………」
私が千切れる。
胸を押さえ、私はその場にしゃがみ込んだ。
浅い息を何度も繰り返すも、うまく酸素を取り込めない。
「…ひ、すい、緋水、」
瞼を閉じる。
白い残像の中に、最後に見た緋水の裸の背中が焼き付いていた。
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