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久々に目にした、見慣れていた部屋のドアの横には、しゃがみ込んで泣いていたあの夜の私の残像が漂っていた。
…私はあの夜の中にまだいる。
この想いを秘めたまま、進むことも諦めることもできずに。
そしておそらくきっと、緋水も。
今夜は、その続きをしよう。
緋水の白くて綺麗な背中を思い出す。
きつく握り締めていた銀色の鍵の形に掌が窪んでいる。
あの夜に手放した鍵をゆっくり鍵穴に差し込み、左へと回す。
久々に感じた感触に不意に泣きたくなった。
ドアを開ける。
玄関マットの色が緑に変えられていた。
緋水は部屋を落ち着いた赤と焦茶、白でまとめあげていたので些かの違和感があった。
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