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隔てた扉の向こうから、橙色の明かりが洩れていた。
懐かしい色の明かり。
パンプスを脱ぎ、私は室内へと足を踏み入れた。
走ってきたからか、それとも緊張からか、私の心臓が狂ったように暴れる。
脈打つ音が体内に響く。
(落ち着け私…)
一度、ぎゅっと眼を閉じる。
そしてゆっくり開いた…
落ち着いた筈の心臓が、一回、ひどく跳ね上がった。
「……………翠、」
目の前には、あの頃より髪の伸びた緋水が立っていた。
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