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「貧血と風邪で保健室に来た子には、心配で来てくれる友達がいる。優しい気遣いをしてくれる友達がいる。なのに…」
鼻を啜る音が短く聞こえた。
私は体ごと都貴さんを向いて、濃茶の髪に手を伸ばす。
優しく撫でると、それに励まされるように嗚咽が漏れ始めた。
「…私には、いない。手を差し伸べてくれる人も、優しく言葉をかけてくれる人も…。羨ましかった。」
都貴さんは少し言葉を切って、呼吸を整える。
「だから…カーテンから出てきた女の子をじっと見ていた。」
顔を上げ、私と視線を合わせる。
「優しい雰囲気を持った人だと思った。こっちから甘えたく、頼りたくなる、そんな雰囲気。そして受け止めてくれる、そう感じさせる雰囲気。」
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