左足のホクロ

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ふたりで、ベッドに潜り込み、くすくすと笑い合う。 ひとしきり笑い合い、互いを見つめ合った。 すると、緋水がゆっくり起き上がり、ベッドサイドの棚から赤い封筒を取り出した。 「これ。」 差し出された封筒を受け取り、緋水に包まれるように座った私は、その封を切った。 中には、一枚だけ、便箋が入っていた。 そして、一言だけ、書いてあった。 「ずっと、一緒にいよう。」 ―それだけで。 たったその一言で、懐かしい筆跡で。 涙が溢れた。 私は帰ってきた。 あの日手放した、この温かさを感じられる、この場所に。 指で涙を拭いながら、私は緋水を見上げた。 「返事、届けるね。」    
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