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喫煙場所を探そうと視線を上げた時だった。 人混みの中を俯き歩く彼女が、見えた。 「…ミチル、」 思わず名前を呟く。 随分痩せた。 それに覇気がない。 まるで知らない人のように変わっていたけど、それはミチルで。 何かがおかしい。 このぴりぴりと伝わってくる違和感が恐ろしくて、私は叫んだ。 「ミチル!」 ……はっと顔を上げた彼女は、もっと別人になっていた。 『亜紀 ごめん、急用ができたから、映画行けなくなった。 別の誰かを誘って。             李華』 亜紀からのメールが届く前に、さっとメールを飛ばす。 携帯を鞄に仕舞い、目の前に座るミチルに向き合った。
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