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シャリシャリと氷を掻き混ぜる。 指先に水滴が着き、紙ナプキンで拭う。 再び外を見る。 本当は、窓硝子に言いたいわけじゃない。 「ミチルが、しんどい思いしてるなら助けたいよ……昔は、そう思える余裕もなかったから、せめて今からでも、」 不意に言葉を切った。 ミチルの髪が揺れた気がした。 視線を真っ直ぐ戻すと、ミチルが顔を上げていた。 その瞳は昔と変わらず、優しい二重だったけど。 今、その瞳からは二筋の涙が流れていた。 「ミチル……?」 何で泣いているのか全く分からない私は、呆然とその様子を眺めた。
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