その男の子の忠告と私の時間

重たい振動音が私の頭を揺さぶる。

「あーもう。うるさい！」

枕の横に無造作に置いたスマホが震えている。
裏返っていた画面をひっくり返すと、【豚肉】と表示されていた。つまり店長だ。

「やば、今日バイトだっけ」

ベッドから飛び降りて、通話ボタンをタップする。

「お疲れ様です！」

寝ていたことを悟られないようにとにかく精いっぱい叫ぶ。

『今どこ？　時間過ぎてるんだけど……今日シフト入ってたよね？』

「ごめんなさい！　ちょっと講義が長引いちゃって……。あ、あと５分後くらいにつきますから」

『……あのさあ、いっつもそれだよね？　そんなに遅れるなら無理にシフト入れて貰わなくってもいいんだけど。引継ぎの子にも迷惑かかるんだよね』

「あ、いえ。今度からはちゃんと行けるように教授にも伝えておきますので！」

『はあ……いや、もう今日は来なくていいよ。ていうか、もうずっと来なくていいんだけど……。とりあえず次回、話をさせて』

プッと無機質な音がして、店長の声は途切れた。
今月は３回もバイトに行けてないせいで、懐具合が心配になる。加奈のためのチケット代が足りないかもしれない。
なによ……豚肉のくせに。

窓の外から赤い日差しが差し込んでいる。気づけば１日が終わろうとしていた。
３コマ目以降の出席を取り逃したことに気が付いて、スマホをベッドに向けて投げる。

今日の分は出席の評価は高くないはずだから、加奈にノートを写させてもらえればテストは大丈夫だろう。
加奈も私が来なかったんだから連絡してくれればいいのに。

朝のことを思い出して、再びベッドに潜りこんだ。