5分後に、来る

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「え! なになに、あの人、裏持ってたんだ」  ももまりが一際大きな声をあげる。  おそらくここにいる全員がサブなり裏なりのアカウントを持っているだろうが、全員自分のことは棚にあげるつもりらしい。  それはそうだろう。今日の目的は『如何にしてあの勘違いBBA(ババア)、エミコを吊るし上げるか』なのだから。  わたしも、(はな)からほかには興味はないのが本音なので「そうだったんですね」と適当に深刻そうな相槌を打つ。  hinakiが大きなため息を吐いた。 「じゃあやっぱりここにいる全員、エミコが法的に罰されることがないならば、何とかして自分たちで罰を与えてやりたい。そう思ってるのね」  その言葉に、ももまりとカフ虫太郎のふたりも大きく首を縦に振った。 「はい。エミコが許せない。法が許すなら殺してやりたい」  ――プツッ。 「以上ですね。因みにあなたにお灸を据えること、旦那さんも了承してくださってます。まぁ、やりすぎましたね。色々と」  録画映像を停止させると、わたしは顔面蒼白のエミコに笑いかけた。  唇が小刻みに震えている。うっすらと開いたものの、声にはならないらしく「ヒュイヒュイ」と下手くそな口笛のような音だけが漏れていた。 「人権侵害、名誉毀損、盗作、肖像権侵害、人格権侵害、著作権侵害……と。まぁ、あなたがこれだけの恨みを買う前にやってきたことってなかなかのもので。本当は証拠画面をいくつかスクショでもして警察に駆け込めば、かなりの確率で、あなたを罰することって出来るんですよねぇ」  わたしは歌うように『いかにも』な言葉を並べると、未だに膝を震わせて地面にへばりついているエミコの隣にしゃがみこんだ。 「それでも、彼女らは手間や費用を考えて、法で裁くのは割に合わないとみて、わたしにあなたの『私刑』を依頼してきたんです」
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