5分後に、来る

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「エミコが来たら、ただ名前を言うだけだと面白くないから、それぞれ一番バズった記事の冒頭を口にしない?」 「わぁー。それ、さいこー! めぇっちゃ面白そうですねぇ! まり、やります!!」  いち早く反応したももまりに「あー。SNSと一緒だな」なんて思う。  彼女は自他ともに認めるhinakiのファンで、hinakiが更新すると、誰よりもはやくリアクションすることで有名だからだ。 『hinakiの腰巾着』 『ももまりマジ落ちたな』 『百合乙』  などと某掲示板で揶揄(やゆ)されていることを、果たしてももまりは知っているのだろうか。 「虫太郎さんは? やりますよね??」  目に星を飼っているんじゃないかという輝きでもって、ももまりはカフ虫太郎を見た。『断ったら承知しねぇぞ?』そんなギラつきもちらちら見えるところが、海千山千が群れをなす芸能界を乗り越えてきただけはあるよな、と思う。 「は、はい。もちろんです……っ」  耳まで真っ赤にして、カフ虫太郎が首をぶんぶん縦に振る。 「ハトさんも、やってくれるかしら?」  hinakiがわたしを見た。わたしはこくりと頷く。  微笑み、もう一度時計に目を落としたhinakiが呟いた。 「あと5分……」  わたしは知っている。  その5分後は、決して来ないことを。  わたしだけは、知っている。
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