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わたしが、それぞれの様子やメイク、服装、仕草をこと細かく覚えているのは、
『これが何度目か分からないほどにこの5分前を繰り返しているから』
に過ぎない。
この5分間はもうひとりの参加者である『エミコ』を待っている時間であり、エミコもまたここにいる誰とも面識がなかった。
エミコは、主婦だ。ただの主婦。ただ何故か彼女には10万を越えるフォロワーがいて、何を隠そうここにいる誰よりも多い。
記事の内容も、誰でも知っているようなライフハックにどこかで見たことあるような内容のつぶやき。子育てに関するイラストや漫画なども描いてはいるが、それらふたつも専用アカウントのひとよりずっと少ない。
失礼ながら、彼女はフォロワーを買っているんじゃないかとわたしは思っている。
まぁだからどうした、という話ではあるが。
TwitterでもYouTubeでも、金さえ出せばフォロワーは買える。普段の口ぶりから察するに、エミコは外資系の旦那を持ち、おまけに実家が太い(今どき都内に新築戸建てを買ってやる親がいることにびっくりしたし、それを書く無神経さにも驚いたが)。
芸能人なんかには黒もいるらしく、以前見事にあぶりだされ炎上し、アカ消しにまで追い込まれたひともいた。
SNSって怖い。
だけど、手軽で刹那的に承認欲求を満たせるし、現実では有り得ない経験ができるし、スクロールすれば無限に情報が手に入るあの空間を、簡単に手放すことはできない。
たぶん、ここに集うわたしを含む4人とも、似たようなことを思っているだろう。
そして、エミコも――。
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