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「もう、やめましょうよ。こんな茶番」
わたしが口を開いていた。壁にかかった時計を見つめながら。
「あと5分なのでしょう? 本題に入ってくださいよ。それとも、わたしを呼んでおいて今更やめにしようとか、言わないですよね? わたしも暇じゃないんですよ?」
「……」
全員が黙り込む。
ももまりはピンクに色付いた唇が、青ざめているように見えるし、カフ虫太郎に至っては、今にも泣き出しそうに顔を歪めている。
唯一、hinakiだけが眉をひそめてこそいるが、真っ直ぐに前を向いていた。
軽く息を吐き、畳み掛ける。
「集合時間、エミコさんだけ1時間も遅いのは、わたしを含めた4人で『私刑の方法』を話し合いたかったからでしょう?
hinakiさんはたぶん、あれですよね。ブログ記事の盗作の件。実際揉めてましたもんね、かなり」
自分の名前が呼ばれたhinakiが、肩をびくりと震わせる。
「ももまりちゃんは、言わずもがな。あの大炎上した件でしょう? いつものように友達の記事に擁護コメントを書いただけなのに、いつの間にか火元が自分にすり替えられていて、実はももまりが言い出したという風にされていたやつ。あれは、怒って当然だと思いますよ。あれによって、あなたもたくさんの誹謗中傷を受けてましたもんね。脅迫の手紙が来たという話も、聞きましたし」
今度はももまりが顔を強ばらせる。カメラ越しに映る困惑したその目を見ながら、含み笑いをした。
「虫太郎さんは……実はよくわかっていないんですよね。虫太郎さんはなぜ、エミコに『私刑』を求めるんですか?」
最後に、カフ虫太郎へと水を向けると、彼女は一度俯いてから勢いよく顔をあげた。
先ほど、ももまりに迫られた時よりずっと赤い顔をしている。怒り。わたしは高揚のあまり声が漏れそうになるが、舌を軽く噛むことでなんとか堪えた。
「あの、実はあの人の裏アカ見つけてしまって……そこで、わたしの書評のこと、ボロっカスに書かれていたのが、ほんとにムカついて。本なんて、全然読まない人に、あんな……」
ようやく水を飲む者が現れた。
それも、渇きを湿すように勢いよく飲んでくれている。上々だ。
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