爆発まで、あと5分

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 俺がここに来て一年ほど経ったある日、3階を巡回していて、えらくきれいなお姉さんが新しく入ったことに気が付いた。瓜実顔に七三分けの大人ボブがよく似合っていて、目もパッチリ大きく、整った鼻筋にちょっと厚めの唇。そして……制服の上からでもはっきりわかる、ふくよかな胸。その左胸のスロープに、「星野 恵実」と書かれた名札が乗っていた。  思わず見とれてしまったが……なんというか、高根の花過ぎる……こんな、大学院の物理学専攻で修士(マスター)まで取ったくせにどこにも就職できず、結局院生時代アルバイトで働いていた警備会社になんとか拾ってもらったような俺なんかでは、とても釣り合わない……つか、絶対彼氏いるよな……  と、思っていたのだが……  ちょうど半年ほど前のことだ。帰りがけの電車の中で、いきなり俺は声をかけられた。 「あの、矢島(やじま) 孝之(たかゆき)さんですよね?」 「え?」  声の方に振り向くと、モノトーンのシンプルなコートを羽織っていて、黒縁眼鏡をかけ化粧っ気もあまり感じられない、見知らぬ女性がいた。俺の名前を知っているということは、どこかで会ったことある人なんだろうが……だめだ、思い出せない……
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