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具体的な場所を言うとまた人が押し寄せたりして、地元の人達にも迷惑がかかったりするもんですから、ここでは一切伏せておきます。
日本のどこか、人里離れた山奥に〝怨呪神〟という神さまを祀る小さな神社がありましてね、心底呪いたい相手のいる人間がそこへ行ってお参りすると、その呪いが成就する……と、いつの頃からか噂が広まったんです。
そのために丑の刻参り――あの、呪いの藁人形に五寸釘を打ち込む呪いの儀式ですね。それを行いに来る者も多く、辺りの木には藁人形がたくさん打ち付けられているだとか、また、その呪いをかなえてくれる神様の化身――黒い獣のようなものを目撃するなんて話もまことしやかに囁かれていました。
そんな、あまり良いものとはいえない御利益ですから、まるで人目を避けるかのように地図にも載っていない山道を行った所にひっそりとお社が建っているんですけどね、まあ、今の時代、ネットで調べれば場所の書かれた記事を見つけるのもさほど難しいことじゃない。
この体験をした四人もそうやって場所を突き止めると、少し離れてはいたんですが、自分達の住んでる町から行けない距離でもなかったんで、夏のある週末の夜にみんなで行ってみることになったんです。
この四人、社会人になってまだ日の浅い二組のカップルだったんですけどね、お互い大学時代からの友達同士で、いってみればダブルデートのようなものですよ。
みんな怖い話や超常現象なんかもけっこう好きな性質でしたから、もうすっかり観光気分です。
その内の一人が買った新車に乗って、街灯もないような真っ暗い山道をわいわい騒ぎながらその神社に向かったんですね。
しばらくした後、おい、あれじゃないか? …そう言って運転していた持ち主の男性が車を止めると、暗闇の中、ヘッドライトの白い光に照らされて、石でできた鳥居が浮かび上がりました。
噂通り神職も常駐していないような、こじんまりとした神社だったんですけどね、狛犬や石灯篭なんかもちゃんとあって、こういう言い方は失礼かもしれないんですが、小さいながらもけっこう立派な感じなんですよ。
よし、入ってみようぜ…ということになって、さっそく四人は車を降りると、その神社の境内へと向かいました。
一応、男性二人が懐中電灯を持って行きましたが、その日はちょうど満月で、深夜にも関わらず周りは意外と明るいんです。
こんな山奥のこんな時刻ですから、当然、彼らの他に人影も見えませんが、風の音もなく、妙にしん…と静まり返っているだけで、彼ら以外の人の声や五寸釘を打ち付ける音も聞こえることはありません。
そもそも噂に聞く藁人形自体、月に照らされた周囲の木々を見てみても、どこにもそれらしきものは見当らないんですね。
ひょっとすると、呪いの儀式をしに来た人がいたりするかもしれないなあ…なんて、ちょっと期待していたところもあったものですから、なんだ、なんか拍子抜けだなあ。ぜんぜん怖い感じしないねえ…とか言いながら、四人は石の鳥居を潜って石畳の参道を社殿へと進もうとしました。
ところが、その時のことです。
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