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わあっ! きゃっ! …とみんな一斉に短い悲鳴をあげたんです。
月明かりに照らされる石畳の上に、真っ黒い小さな影のようなものが目に入ったんですね。
咄嗟に懐中電灯の明かりを向けると、それは一匹の黒猫でした。
本当に夜の闇よりもなお真っ黒い色をしていて、黄色い眼は光を反射して爛々と輝いているんです。
電灯の光に驚いたその黒猫は、ニャア…と一声大きく鳴くと、パッと飛び出して脇の草叢に姿を消しました。
一瞬、背筋が凍る思いをした四人でしたが、猫だとわかって安心したんでしょうね。なんだあ、猫かあ。例の黒い獣かと思ったよお。でも、黒い色してるし、呪いをかなえてくれる神様の使いだったかもしれないよ? …とか冗談半分におしゃべりしながら、和気あいあいと四人は改めて社殿へ向かいました。
まあ、御利益は〝呪い〟なんていう特殊なものですが、社殿はいたってどこにでもあるような、お堂くらいの大きさの木造のものです。
それでも、深夜の山奥というシチュエーションのためか、おどろおどろしいような雰囲気はなくとも、静かな恐ろしさというか、近づきがたいような神秘性は感じるんですね。
月明かりがあるんで社殿全体の雰囲気はなんとなくわかるんですけどね、屋根の庇で暗い影ができていて、正面に掛かっている扁額――あの神様の名前が書いてある看板のような木の額は見えないんですよ。
そこで、懐中電灯を持ってた二人がその額を照らして、書いてある文字を確かめようとしたんです。
ですが、電灯の明かりにその辺額が照らし出された瞬間、全員、目を見開いて固まってしまったんです。
なぜなら、そこに書かれている神名が変なんですよね。
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