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ふと薬のことを思い出した。あの日から、使い道に迷っていたのは事実だ。邪な欲望に利用しようと思ったことも数知れず。しかし、なぜか使わずに今日を迎えた。
あと5分あれば、デザインにキャッチコピーを挿入し、完成させられる。メールに添付して送れば提出時間に間に合うはずだ。
――今しかないんじゃないのか?
淫らな欲望を満たすために使えないのは、正直惜しかった。ましてや仕事で使うハメになるなんて。でも、そんなこと言ってる場合じゃない。
腹をくくった俺は、カバンから財布を取り出し、無地の白い紙で包んだ錠剤を手のひらに乗せる。
「あぁもったいない……でも、仕方ない!」
机の上に寝かせたペットボトルの天然水を鷲掴みし、薬を一気に飲み込んだ。
数秒後、襲ってきたのは激しい頭痛。血がドクドクと音をたてて巡り、頭が割れそうなほどの激痛が。思わずうめき声が漏れる。
痛みを堪えるために強く閉じていた目をゆっくり開くと、それまで当たり前のように仕事をしていたスタッフたちの動きが静止していた。
「時が……止まってる?!」
目を疑うとはまさにこういうことだろう。窓に駆け寄り地上を見下ろしてみると、目に映る景色のすべてがストップしていた。あの日、男が言った通りに。
そうだ! たった5分しか時間は止まらないんだった! 我に返り、再びモニタの前に。気合いを入れ直しマウスに手を乗せた瞬間、男の叫び声が耳に飛び込んできた。
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