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10分後。
──あの悪魔は、まだ、居た。
俺が最後に見た時と同じポーズで未だに肩を少し震わせていて、俺は溜息をつきながら悪魔の隣に座ってから街で買ってきた果物のカゴを渡した。
「買いすぎたから一緒に食べてくれ、リンゴとかは食えるだろ? それと目元を強く擦ったら駄目だ」
驚いたようにポカンとしている悪魔の目元にハンカチを当てて涙を拭いてやれば、恥ずかしいのか顔を逸らされたがしっかりハンカチは取られた。
「・・・・・・貴様は、人間だろ? 私が怖くないのか?」
「泣いてる悪魔を怖いとは思わないな」
「ッ、泣いてなどいない、貴様の見間違えだ」
嘘つけ、めっちゃ目元腫れてるぞ。
そう言いたくなったがなんとか堪えながら果物を渡せば目にも留まらぬ速さで果物を取った。
目元は腫れているけどそれでも分かるくらいには整った顔をしてるな。 服もどことなく高そうだし金持ちか? いや、悪魔に貧乏も金持ちもないか。
その時、ふと、腰辺りで何かが揺れていた。
俺はなんとなく気になってそれを握ると、
「ッッッ〜〜〜!!! な、なな、何をする!!?」
「あ、悪い、尻尾だったのか」
どうやら握ったのは尻尾だったらしく悪魔は体を大きく跳ねさせると尻尾を服の中に隠した。
涙が滲む目で睨まれて、俺は両手を上に上げる。
「悪かった、まさか尻尾があるとは・・・・・・」
「あるに決まってるだろう! 尻尾は悪魔の弱点になりうるのだから隠すのが普通だ。 そんなことも知らないのか人間! 堂々とセクハラをするな!!」
「は? 勘違いするなよ、俺がお前みたいな泣き虫にセクハラするわけないだろう。 どうせするのなら美人でスタイルの良い綺麗な人間の女性にする」
・・・・・・というか、悪魔の尻尾は弱点なのか。
もしかして、ベリアルもなのか?
いや、でも、触ったらセクハラになるらしいな。
そんな事を考えていれば俺の言葉に何か嫌な事があったのか、再び目に涙を滲ませていて俺は面倒臭いという気持ちを押し殺しながら溜息をつく。
「悪かった、謝るから泣くな」
「泣いてない・・・・・・嫌な事を思い出しただけだ」
いや、泣いてるって。
俺は肩を震わせながら泣いている悪魔の手の上に一枚の写真があるのに気付いた。
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