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写真には凄い美人の女の人が写っていた。
腰辺りまで伸びた金色の髪、綺麗な赤の瞳、なによりスタイルが良い。 絶世の美女に相応しい。
「好きな人か?」
そう問いかければ、悪魔は静かに首を縦に振っていて俺はなんとなく事情を察してしまった。
多分だが、この人は亡くなっている。
写真もかなり古い物だし、好きな人の写真を見てニヤつくなら分かるが泣くなんて有り得ない。
「あの時ミカエルが邪魔しなければ・・・・・・!!!」
「ミカエル? ミカエルって、あのミカエル?」
ルシファーと同じくらい有名な天使だ。
なんでこの悪魔がミカエルと?
「アイツが邪魔しなければ私と彼女は幸せに暮らす事が出来たのに・・・・・・彼女は私の物だったのに!」
「その女性の名前は?」
「サラ。 サラって名前なんだ」
懐かしそうな、悲しそうな声で、名前を紡ぐ。
今にも大泣きしそうな顔をしながら、でも表情は笑っていて、とても悪魔とは思えない表情だ。
「面識はあるのか?」
「雨の日などは見えていたはずだが、彼女は幻覚と思っていたようだ。 でも、たまに寂しい時などに声をかけてくれた──私と話をしてくれたんだ」
体調や気分で見えたりすると聞いた事があるな。
「出会う運命だった、運命の相手なのだと、この時初めて神に感謝してしまった。 でも神は私に幸福という感情を覚えさせた後で絶望を覚えさせた」
おっと、雲行きが怪しいな・・・・・・。
「ミカエルを寄越して私と彼女の結ばれていた赤い糸を断ち切ったんだ、酷い話だとは思わないか?」
「まぁ、気持ちは分かる。 愛してる人と無理やり引き離されるのは辛いからな、俺も経験してる」
「分かってくれるのか、人間!!」
「俺にはちゃんとクロって名前があるんだが」
「クロ・・・・・・うん、覚えたぞ。 貴様はなかなかに話が分かるようだからな、明日も話してやろう」
何で上から目線なんだ、それに来る気はない。
今日はたまたま寄っただけで、たまたま、泣いているのが気になっただけ。 それだけなんだ。
「結構だ、俺はこれでも忙しいからな」
「・・・・・・来て、くれないのか?」
やめろ、そんな悪魔らしくもない寂しそうな目で俺を見つめるな。 俺はそういうのに弱いんだよ。
「・・・・・・来れば良いんだろ、来れば」
「! やっぱり私と話したいのだな、照れてないで素直に言えば良いのに人間は照れ屋なんだな」
くそっ、なんか腹立つ。
でも、ただ話したいだけ、みたいだからな。
俺もコイツと話しているとベリアルへの憎しみを忘れる事が出来た。 気分転換にここに来ても別に良いだろう・・・・・・なんか、イラッとはするがな。
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