第12章 イカれた堕天使

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待て、Mr、そんなの駄目だ。 普通はそう言わないといけない。 でも言えなかった。 恐怖や驚きからじゃない・・・・・・ベリアルが死んでくれたら嬉しいと、どこかで思っているからだ。 「誰かと思えばシュウですか、てっきりルシファー様が来られたのかと油断しました。 それで、私にいつまで刃を? 私を誰だと思っているんです?」 ベリアルはそう言ってにっこり微笑むとブワッと背中から大きな白色の羽をだすと、Mrの首を手で掴んだ。 この距離でも分かるほどに強い殺気だ。 俺は顔から血の気が引くのを感じた。 『クロくん、大好きですよ』 俺を孤独から救ってくれた人が死にかけてるのに何をしているんだ、やる事は一つだろうが! 自分をそう駆り立てながら俺は強く拳を握り締めながら駆けていき、ベリアルの腕を掴んだ。 「・・・・・・黒羽さん、悪いですが離してください」 「離して欲しいならMrを離せ」 「私は貴方を苦しめる元凶を殺してあげようとしているのに止めるんですか? 犯罪者なんですよ?」 確かにMrは悪い事をした。 罪を償うべきだと思う。 でも、それはベリアルだって変わらない。 「ベリアル・・・・・・お前なんだろ? お前が俺の家族とも呼べる存在だったユキの家族を殺したんだ!!」 Mrから手を離したベリアルは俺の方に向き直ると優しい手付きで俺の頬を撫でながら言った。 「──だから、何ですか?」
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