第13章 最後の願い

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その日はバイトを休んで休憩していた。 たまには息抜きが必要だと思い。 疲れを癒すために近所にある川辺で寛いでいればこの辺で見た事のない少年が、顔や身体をボロボロにしながら歩いて来て私の隣にそっと座った。 「少し・・・・・・休憩させてくれ」 「ど、どうぞ、好きなだけ居てください」 「ありがとな」 そう言って微笑む姿に少しドキッとした。 ボロボロな姿や、目付きの悪さに、てっきり柄の悪い不良少年だろうか、と思っていたから普通の少年のように微笑む彼に酷くギャップを感じた。 「・・・・・・俺の顔に何かついてるか?」 どうやら、魅入ってしまってたらしく少年が少し困ったような声で言ったので急いで目を逸らす。 「す、すみません」 「別に良いけどさ。 それにしてもアンタって変な仮面してるな、仕事関係か? それとも他に?」 「えっと・・・・・・酷い火傷の痕があるので、こうして隠してるんです。 左目から左頬まであるので」 嫌われるだろうか。 またと言われるだろうか。 「ふぅん、別に隠す必要ないのにな」 「え?」 「ああ、気に障ったなら悪い。 でも、俺は火傷の痕とか見ると「カッコ良いな〜」って思うからそう思ったんだ。 個人差があるし聞き流してくれよ」 初めて、カッコ良いと言われた。 いつも「化け物」と言われたり、見せてもないのに気味悪がられたりした。 だから嫌いだったのに。 「・・・・・・私が気持ち悪くないんですか?」 「は? 当たり前だろ? 顔に酷い火傷があって心が優しい奴と、容姿が良くて心が変態の奴だったら俺は普通に後者の方が気持ち悪いと思うからな」 その瞬間、思わず涙が出た。 そして彼が輝いて見えるようになった。 これが──私と彼の出会いであって、私の人生を反転させた日でもある。
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