第13章 最後の願い

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彼の名前はすぐに知る事が出来た。 家も分かったから手紙を書いて送った。 バイト先からの店長からは「何かシュウくん、良い事でもあった?」と聞かれるほどに浮かれていた。 それから、クロくんに会いに行くようになった。 近くの中学校に通っていると聞いたから私はとりあえず様子を見に・・・・・・いや、迎えに行った。 「クロくん!」 「う、わっ・・・・・・ああ、あの時の人か。 この前はわざわざ手紙くれてありがとな、少し嬉しかった」 そう言って薄く微笑んだ彼を見ていると胸が満たされるような感覚になって凄く嬉しくなった。 (今日もカッコ良い・・・・・・制服も似合いますね) うっとりしながら見つめていれば、 「おい、! そいつは恋人か〜?」 ゲラゲラ笑う声が聞こえてきて思わず文句を言おうとすれば、ぐっ、とクロくんに腕を掴まれる。 まるで私に、話を聞かせたくない、と言いたげに急いで歩いて行くクロくんを見てズキッと刃物で刺されたかのように凄く胸が痛くなった。 (クロくん・・・・・・もしかして、イジメを?) ここ何日か、彼を見ていたがいつも身体中がボロボロで怪我ばかりしていた。 てっかり誰かと喧嘩していると思っていましたがイジメられてる? 「恋人か、って言われていたな。 嫌だったか?」 「いえ、別にそれは不愉快では・・・・・・むしろ、そう見られて嬉しい、って、何言わせるんです!?」 体温がぐんっと上がってくのを感じて叫ぶように言えば、クロくんは面白そうに肩を震わせた。 そして私の手を取ると、 「──なら、俺と付き合うか?」 と、言いながらギュッと恋人繋ぎをした。 「あっ・・・・・・だ、駄目ですよ! 私は大人で、君はまだ中学生です! 青少年法に触れますから!!」 そう言えばクロくんはポカンとした表情をすると面白そうに微笑んで私の手の甲に軽くキスする。 初めての感触にビクッと身体が跳ねた。 「冗談だよ、冗談、本気になるなよ」 「なっ!? 大人をからかってはいけませんよ!!!」 「──もしかして本気で言ってほしかった?」 中学生とは思えないほどに色気をたっぷり含んだ声に思わず私は本気でドキドキとしてしまった。 「なーんてな、冗談だ。 俺は誰とも付き合う気は全くないから本気にするなよ、それとそんな顔をすると俺みたいな意地悪な奴にからかわれるぞ」 優しくて、少し、意地悪。 そんな彼に私は心を奪われてしまった。
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