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それから、どのくらい経ったのか。
背後からマルコに腕を掴まれて、そのまま、俺を抱き締めて「大丈夫だ」と言って頭を撫でられた。
愛する人たちといつまでも一緒に居られる訳ではなく、どんな素晴らしい事も過ぎ去ってしまう。
・・・・・・そう分かっていたはずなのに。
『私はクロくんが許す限りは傍に居ますよ』
自分の中の最も大切な部分をごっそりと削り取られてしまったような空虚感を抱えている。
そして、バランスが崩れてしまい、今はマルコに支えられ辛うじて立っているような状態だった。
なぜか、意識していないと呼吸がうまくできない。
吸ったり吐いたりするという子供でも出来る事に集中しなければ、今にも息が止まりそうだった。
「っ! クロ、少し膝をつけ」
言われた通りにそっと膝をつけば、地面でずっと咳き込んでいたベリアルの前に悪魔が現れた。
あれは・・・・・・ベルゼブブ? 一緒に居るのは誰だ?
ぼんやりとした気分になりながら見つめていれば黒ずくめの悪魔がこちらに歩いてきて、俺の顎を片手で掴んで強引に自分の方へと向かせてきた。
高そうな服、綺麗なサラサラの黒髪。
そして向かい合うだけで伝わってくる威圧感。
『傲慢』の王──ルシファーか。
「貴様がベリアルに致命傷を?」
「・・・・・・分か、らない。 なにも、覚えていない」
「そうか、今日は少し休むと良い。 明日、貴様の家に迎えを寄越す事にするから準備をしておけ」
「ああ、分かった」
自分でも驚くくらい無心だった。
魔王を前にしているというのに恐怖や感動などを感じなかった、ただ、早く帰って眠たかった。
「・・・・・・ベリアルは牢に入れる、もし話をしたいと思ったら俺に言え──そしてマルコ。 お前は一日この人間についてやれ、異常があったら知らせろ」
「了解しました、ルシファー様」
そっとマルコに身体を担がれた。
他に運び方があるだろ、と言いかけたが降ろしてもらったとしても自分で歩けると到底思えない。
俺は重力に逆らわずにそっと瞼を閉じた。
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