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次に起きた時には家についていた。
マルコは俺が寝てるベッドの横にある椅子に座り静かに本を読んでいた。 題名は外国語であんまり分からないが、多分、そうとう難しいんだろう。
そう思っていれば俺が起きたのに気付いたらしいマルコが子供を撫でるように俺の頭を撫でた。
「・・・・・・マルコ?」
「まだ寝ていろ、疲れておるだろう」
「俺の事は気にするな。 お前こそ、そろそろ眠る時間じゃないか? 見張りは良いから早く寝て、」
「我はよく『鈍い』と言われるが、それでも貴殿が悲しんでる事は分かる。 だから我の事は気にせず好きに悲しんで、奴との別れを悲しむが良いぞ」
悲しくなんて、ない。
大丈夫、俺は元に戻っただけだ。
──元のように孤独になった、だけ。
『クロくん、貴方が大好きです』
常に言われていたMrの言葉が脳裏に過ぎる。
冷たい涙がふがいなく流れて、泣くまいと思っていても込み上げてくる涙をどうにも出来ない。
「泣け泣け、泣く子は育つと言うからな」
ポンポンと髪を撫でられ・・・・・・涙が溢れた。
それからやがて──どれくらいの時間泣いていたのだろうか──もうこれ以上泣くことができないというポイントが訪れた。感情が目に見えない壁に突きあたったみたいに、涙がそこで尽きた。
ユキと居る時もずっと我慢していた。
俺が泣いたらユキも泣くような気がして。
皆が求めている俺は絶対に泣かない。
だから今まで堪えてたのにほんの少し優しい事を言ってもらえただけで、簡単に泣いてしまった。
「奴の死体はルシファー様が埋葬すると言ってたが見に行くか? 最後のお別れくらいするべきだ」
「・・・・・・っ、ああ」
泣いたってMrが戻るわけではない。
俺は気を抜けば流れそうになる涙を必死に堪えるように拳を握り締めた。 そしてそれと同時にあの時の感覚を思い出して俺はマルコに質問した。
「俺は、悪獣化、していたのか?」
「・・・・・・なりかけだった。 あの時、奴が暴れてた貴殿を止めなければ貴殿が身体の負担に耐えれず死んでいた、奴はそれを分かっていたのだろう」
悪獣化していた時の記憶は、ない。
ただ怒りを感じていたという事は覚えてる。
酷く冷たくて真っ暗な世界に落とされてひたすら俺を責める声と、ベリアルの嘲笑う声が聞こえて振り払うように俺は無我夢中で拳を振るってた。
思い出すとまたじわっと涙が溢れそうになり俺は毛布を頭まで被り直し、もう一度眠りに入った。
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