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「恥知らずはぬしであろう、ベリアル」
そこには分厚い本を持った大男が居た。
白衣のようなものを羽織ったその男は二メートル程の高身長にも関わらず、ひょろっとした体格で長い深い緑色の髪は後ろの方で綺麗に結っている。
顔には黒い影が掛かっていて顔は見えないがベリアルの表情から察するに、大嫌いな相手らしい。
・・・・・・博士、みたいな奴だな。 本当に悪魔か?
「クロ、ぬしは優しいな」
うん? 一体なんの話なんだ?
首を傾げていれば隣に居たアモンとマモンがキラキラと瞳を輝かせて、凄い速さで飛んで行った。
「なぁなぁ、褒めてくれよ! ちゃんと命令通りにクロを案内したんだ。 迷子にもならなかった!」
「はいはい、本当ですよ。 役に立てました」
「そうか・・・・・・よくやった、二人とも」
ポンポンと少し控え目にアモンとマモンを撫でた男は俺に近付いてくると、少し口角を上げた。
「すまぬ、意味が分からないだろう。 余の名前はダンタリオン──アモンとマモンは余の部下だ」
「あ、ああ、そうだったのか」
それにしても・・・・・・何か、心を読まれてるような気がするんだが気のせいか? 名前も知ってるし。
しかも「優しい」ってなんだ?
「余は未来が見える、この本のお陰でな」
ダンタリオンは分厚い本のページを捲って見せてくれたが、生憎ながら俺には文字が読めない。
なんだ、これ? ラテン語・・・・・・でも、ないな。
もしかして独自に言葉を編み出しているのか?
二匹も読めていないようだしな。
「さよう、これは余にしか読めない文字である為に例え全知全能のルシファー様であろうともこの本だけは読む事が出来ない。 内容も聞きたいか?」
「まぁ、気になるな」
「この本には過去の出来事から未来の出来事までが細かく記されているのだ。 余自身の言葉や行動や思いまでも・・・・・・無論、君の事も把握できている」
プライバシーを侵害されまくってる気がする。
「ふむ、それは一理あるな。 だが読んでしまったものは仕方ないだろう、諦めてくれたまえ、クロ」
め、めんどくさい・・・・・・というか、やりづらい。
俺が何も言わなくても目の前に居るこの威圧感がある悪魔は分かるわけだろ? すっごい違和感。
「すまぬ、面倒をかけるつもりはないのだが、この本の内容は頭に入っている。 だから余と会話する時は話さなくてよい、わざわざ言うのも面倒だ」
・・・・・・アモンが言ってたのはコレか。
『ダンタリオン様は不器用なだけで凄く優しくて寛容な方なんです』
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