第2章 カラスと天使

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扉の先に居たのは俺に酒を飲ませた悪魔だった。 彼は申し訳なさそうに顔を伏せている。 その姿が飼っていたゴールデンレトリバーと少し重なって、俺はその頭を撫でてながら笑った。 「わざとじゃない事は分かってるし、大丈夫だ」 俺が話しかけると、彼はハッと顔を上げた。 そして嬉しそうな悲しそうな顔をしながら、骨が折れるんじゃないかと思うほど抱き締めてきた。 「これからは酒じゃなくトマトジュースにするから安心してくれ!そしたら一緒にのむぞ!!」 「ああ、それなら一緒に飲めるな」 彼は、少しだけ安堵したような顔をした後、俺に礼を言うと去って行ってしまった。 「・・・・・・」 俺はその去り際をじっと見つめていた。 何だ。今の。俺への好意が籠っている視線。 ──俺を、俺の事を好きだと思ってる視線。 ああ、その気持ちは嬉しいんだが、でも一体なんなんだろうか・・・・・・この不思議な感覚。 心の奥から得体の知れない何かが疼き続けている。 そして、俺を縛り付けて離さない。 これは何なのだろうか。俺にはこの感覚のことがなんなのか分からない、知りたくもない。 ──ただ、俺はあいつらに好意を向けてもらえて本当に満足だ。そしてそれと共に、不安になる。 『誰が貴方みたいな人殺し・・・・・・いや悪魔なんかと好き好んでいると思ってるのよ。馬鹿なの?』 また、嫌われるんじゃないか。 また、騙されてるんじゃないか。 ──やめろ。そうじゃない。これは違う、こんな過去の事をずっと根に持ち考えるなんてダメだ。 ──過去など意味は無い、俺はもうとっくの昔に通り過ぎた過去の事なんて考えずに── 「クロ君!私にもハグしてくださいよ〜!!」 俺が思考の海に沈む最中、突然声が掛けられた。 「もうキスまでした仲なのに、ハグはしてくれてはいないでしょう?一回だけで良いですから!!」 「嫌だ、断る。言い方が紛らわしい」 そう言いながら近付いてくる身体を押し返してやれば「ケチッ!」なんて言葉が返ってくる。 全く、子供なのか、こいつは? 呆れているはずなのに、何だか胸の奥がポカポカした気分になった。 「じゃあ、キスだけでも!」 なのに、雰囲気を壊すようにま急接近されて俺は遠慮なく押し返す。Mr.は拗ねたような言動をしているのに、どこか楽しそうな声色をしていて、俺もつられて楽しくなった。
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