プロローグ

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──魔王城、魔王の間。 漆黒の闇を色にしたような深い黒色の髪は二メートル以上はあるであろう男の腰まで伸びている。 人の血を詰め込んだような赤黒い瞳を細めながら男は深く溜息をついた。 そして、手を突き出してスライドすると何もない所から画面が出て来る。 慣れたように宙に浮いている画面をスライドして【最新報告】と書かれた項目をタッチする。 するとズラリと目眩がするほど大量の報告があり男はその整った顔の眉間にぐっと皺を寄せた。 「等活地獄での暴動鎮圧、ベルゼブブの食費、アスモデウスの失踪・・・・・・初めは分かるとしても後の二つは分からんな。 なぜ俺に報告をするんだ」 そう言って男が画面を閉じようとすればピコンと陰鬱な部屋の雰囲気に似合わない軽快な音が聞こえて男は一番上にある報告をタップして読んだ。 【まだ死ぬ予定ではない少年が、地獄の渦に巻き込まれて地獄(こっち)に向かっています。 少年は契約者でないにも関わらずメフィスト様の匂いを放っており、渦に入ったショックなのか記憶が少しばかり混乱しているようです。 お手数ですが報告を確認次第、至急への対処方法を教えて下さい】 男はピクッと眉を震わせると怒りを抑えるように目を閉じて、目を開けると同時に名前を呼んだ。 「メフィスト、話がある。 一秒で来い」 「はい、メフィスト・フェレス参上いたしましたが何か用があるのですか? 我が王──ルシファー様」 姿は見えないが多分近くに居るんだろう。 男──ルシファーはこれ以上ないほど眉間に皺を寄せ、溜息をつきながらメフィストに言った。 「に貴様の匂いがついていたそうだ」 「おや、それは不思議ですね」 知りませんと言いたげな声に男は怒りで手を握り締めながら、低く、重い、声で言葉を紡ぐ。 「貴様にはここ百年あまり人間界への出入りを禁止していたはずだが・・・・・・無断で外出してたのか?」 「DDに呼び出されて数年前に行きました、その時生き残りが居ましたねぇ〜。 死にかけだったからなのか私の姿が見えていた不思議なイケメン君」 「名は?」 「黒羽輝(くろばあきら)、通称クロ。 私が見た時は14歳くらいだったと思いますが・・・・・・彼がですか?」 「の対応は大変なんだ、よりにもよってあの馬鹿が引き起こした事件の被害者となれば我々も手を出せない。 だが、フラフラと地獄を歩かせれば殺される──そうなれば、また、我らは裁判にかけられるんだ」 今度は勝つ事は出来ないぞ。 男の紡いだ言葉を黙って聞いていたメフィストはククククッと喉の奥で笑い声をあげた。 「大丈夫ですよ、彼は強い子ですから。 優しくてクールな自分を演じている哀れな道化師です」 ルシファーは顔を顰めながら話を聞いてたが何かを思い出したように凄いスピードで画面をスライドすると画面に向かって声を発した。 「黒羽輝、17歳。 その人間は・・・・・・不良品の悪魔が居る所に送り出してやれ」 それだけ言うとルシファーは画面を閉じて口元にニヤリと笑顔を浮かべながら溜息をついた。 すると、どこからか楽しげな声が聞こえてきた。 「地獄の街(ヘル・タウン)に送るんですか?」 「あそこは人間好きの悪魔が多いだろう、お人好しだらけの不良品の悪魔。 しかも、そこはアイツが担当している所・・・・・・無事に生き残れるはずだ」 「意地悪ですねぇ、確かにあそこはお人好しの悪魔だらけですが街の外は質の悪い悪魔や上位悪魔がウロウロしている場所でしょう? もし、ベルさんに無礼な事でも言えば遠慮なく殺されてしまいます」 「もしベルゼブブが殺したとしてもそれは上位悪魔侮辱罪になるから、天界も訴える事は出来ない」 「流石は我が王! 素晴らしい作戦ですね!!」 「ふん、当然だ。 それよりお前は良いのか? あの少年となにか契約でもしたんじゃないのか??」 「・・・・・・もし彼が私の与えたチャンスを覚えていなければそれまで。 覚えていたら、その時考えます」 「相変わらず悪趣味だな」 「お褒めの言葉ありがとうございます。 では私は今からアスモデウス様を探しに行かなければなりませんので──失礼しますよ、ルシファー様」 「ああ、頼んだ」 ルシファーはメフィストの気配が消えたのを確認して立ち上がろうとすれば、新たな報告が来た。 怪訝な顔をしながらもルシファーは画面を開く。 【再び悪魔殺しがありました! 前回と同じく首を鋭利な刃物で切られているらしく・・・・・・魂も既に消えてしまっています。 恐らく呪いの道具で殺されているものかと──対応をお願いいたします】 「はぁ・・・・・・頭が痛いな」 ルシファーは頭を抱えながら溜息をついた。
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