第2章 カラスと天使

8/10

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
思った通りというべきか、Mr.はそれから姿を見せなくなった。別に寂しいわけでは・・・・・・いや、本音を言うとかなり寂しい。恥ずかしいのだが。 変人ではあったが面白くて優しかった、色々教えたりしてくれたしな。消える前にお礼くらいは言うべきだったな・・・・・・ありがとう、くらい。 結局Mr.が悪魔殺しの犯人かどうかなのかは分からなかったが、とりあえず知り合いなのは分かった。 そんな事を考えていれば、どこからか大きな鐘の音が聞こえてきた。 「ベリアル様がいらっしゃったぞ!」 ベリアル様? 一人の悪魔が叫ぶと同時に門が開けられる。 そして、その向こうから一人の男が現れて、俺はそのベリアルとやらの姿を見て思わず絶句した。 なぜならその悪魔の顔は俺が今まで見たことがないくらいに整っていて、そして美しかったから。 思わず息を呑んだが、そんな俺に構うことなくベリアルという悪魔は俺に近付くと顎を掴んで、 「ようこそ地獄へ、貴方を歓迎します。黒羽輝くん」 それはもう、この世のものとは思えないくらいに綺麗な声で俺の名前を呼んだ。その響き、そして声色、俺にとってはあまりにも心地良すぎる。 「自己紹介がまだでしたね。私はこの地獄の街(ヘル・タウン)を治めているベリアル・・・・・・貴方の噂は聞いてますよ?悪魔殺しの元容疑者で今は地獄の街(ヘル・タウン)の重要人物だ、と」 重要人物?俺が?ないだろう!! 俺が呆然としていればベリアルは空いている手で俺の頬を撫でながら、爽やかな笑顔で言った、 「地獄は貴方が思っている以上に辛い場所ですよ?罪を犯せば生きている時と同じように罰せられますし、私は差別しませんが人間を差別する悪魔達にイタズラされるかもしれません。そんな環境でただの人間である貴方が悪魔達と共存するつもりですか?」 その言葉は俺の心に深く突き刺さった。 それと同時に俺は、こいつ一体なんて事を言っているのだと怒りもした。 何が『私は差別しませんが』だ。お前がこの街に居る誰よりも人間と悪魔とを比べて差別してるじゃないか。自分の事を棚に上げて言いやがって! だが、そんな俺の葛藤を知らずベリアルは、ただただにこにこ微笑んでいる。まるで天使のような顔で微笑みで、だ・・・・・・本当に恐ろしい悪魔だ。 俺を意を決して口を開いた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加