第2章 カラスと天使

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それから一週間。 ベリアルに反論し、勧誘を受け入れなかった俺は悪魔達から『命知らずの恩人』という、あんまり嬉しくない称号をもらい、広められてしまった。 毎日がどんちゃん騒ぎの毎日でうんざりする事もあるが、生きていた頃よりはマシだと思える。 そして、ベリアルの言う事もわかる。悪魔の行動原理は本能だ、本能のままに動いている。 それは人間にも言える事だ。 あの時ベリアルの言っていた事はこの世界にとっては正論で、理解したくないが理解もできる。 しかし、それを理解するか受け入れるかは、また別の問題だろう。 ベリアルはここに居る悪魔達を『欠陥品』なんていって、躊躇なく殺そうとしていた。力と恐怖で悪魔達を押さえつけようとしていたのだ。 こいつらの言葉も聞かず、一方的に支配して自分に従わせようとした。 俺には、それが許せなかった。 「おい!また悪魔殺しがあったぞ!!」 悪魔殺し・・・・・・ああ!すっかり忘れていた!! ベリアルの事を考えていたせいですっかり忘れていたが、俺はMr.を探す予定だった!もちろん、お礼を言う為だ。 それと・・・・・・もし、Mr.が犯人なら説得して止めてもらおうと思ってる。 「なぁ、その悪魔殺しってどの辺であったんだ?見に行ってみたいんだが」 「ここから歩いて十分くらいの所にある赤い川(レッドリバー)で起きたと聞いたが・・・・・・危ないから行かない方が良いぞ?」 「大丈夫だ、教えてくれてありがとう」 俺はお礼を言って、急いでその悪魔殺しの現場とやらを見にいく事にしたが、少し不安だった。 ──もしMr.が本当に犯人だったとしたら。 俺は彼を捕まえる事ができるか?俺に優しくしてくれた、家族以外に好きだと言ってくれる友達がいなかった俺を地獄に連れてきてくれた恩人だ。 そしてなによりも、 『大好きですよ、クロくん』 ツンツンしていて素っ気ない態度の俺を好きだと言ってくれる。嘘でも、世辞でもない、本気で。 友達もいない、家族もいない。 孤独が嫌いな俺にとってMr.は友達であり、家族のような存在・・・・・・たった数日でも一緒に居てくれようとしてた。それがどれだけ救いになったか。 いや、でもだからこそ。 俺はMr.を止めるべきなのか?
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