第3章 狂気の仮面

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俺の怪我の手当てをするとベリアルは手土産だと言って、お菓子や、飲み物、俺が生きていた頃に食べていた物の詰め合わせをブレゼントしてくれた。 墓場から取ってきた物らしいが。 ま、まぁ、くれたのだからありがたく貰っておこうと受け取ればベリアルは尻尾を振って喜んだ。 何だかんだいって悪い奴じゃなさそうだし、ベリアルにも世話になった・・・・・・なにか礼をすべきだな。 「なにか、礼をしたい。望みは?」 「子作、」 「それ以外でだ」 「ならキスとかでも良いですよ」 こいつ、脳内ピンクすぎるだろ。色欲の悪魔でもないくせに考えているのはセクハラともとれる事ばかりだ。 だが、感謝はしているからな。 それに初めてでもないし、女でもないのだから、たかがキスくらいだったら何とも思わない。 俺は地面に膝をついているベリアルに近付く。 そして、頬に軽くキスをした。 俺は、ベリアルの頬に触れることで、なんとなくだがその気持ちが分かった。こいつがなんで俺に執拗にスキンシップをしてくるのか分かった。 こいつは、ただ単に色欲に溺れたいだけなのだ。 今までベリアルはその顔の良さから誰にも拒否をされた事がない。だから自分を初めて拒否した人間である俺に興味を持っているんだろうと思う。 悪魔らしいといえばそうだが、実際にこんな奴がいればクズのようにしか見られないだろうな。 だからこそ、俺はこいつを拒否する。 理由は簡単──こいつは俺の事を気に入っている限り、地獄の街(ヘル・タウン)に手を出すことは多分だがしないだろう。かなりの気分屋みたいだからな。 「黒羽さん、今日のことを他の悪魔達に自慢しても良いですか?可愛い恋人ができました、って」 「好きにすれば良い。恋人とは言うな」 「ありがとうございます、お礼に地獄の街(ヘル・タウン)の悪魔達には少し目を瞑りましょう。それに王にこの事が知られれば、私は殺されてしまいますからね」 ──しかし、ベリアルはこんな俺に平気で好意を寄せるほど、人間に対する憎悪が薄いのか。 悪魔は人間が嫌いなものだと思ってた。 ベリアルは悪魔の中でも飛び抜けた存在で、その権力はもちろん、魔王さえも欺く知力を持っているんだ、と他の悪魔達に聞いた事がある。 だが、そんな頭の良い奴には見えない。 だって、 「黒羽さんからキスしてもらえるとは・・・・・・まぁ、望みを言うならもっと深いのが良かったですがこれもこれで良い、日本人は初心で素敵ですね」 これだぞ?頭が良いように見えるか? 俺はそっと溜息をつきながら、頬を赤くしながら何やら呟いているベリアルを静かに眺めた。
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