第3章 狂気の仮面

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「えっ、クロくん!?す、すみません、ネックレス嫌いだったとは知らなくて・・・・・・受け取ってくれなくて良いですから!だから泣かないでください」 必死な形相で言ってくるMr.はやっぱり両親に似ていて、俺は服の袖で涙を拭ってから、微笑んだ。 「──ありがとう、Mr.。凄く嬉しい」 そっと仮面のくちばしにキスをする。 するとMr.は瞳を大きく開き、分かりやすく慌てた様子で言葉にならない声を漏らしながら仮面を手で覆って俯いてしまった。まるで少女のようだ。 その反応につい頬が緩んで俺はMr.がいつも被っているシルクハットを外して、そっと引き寄せる。 Mr.は俺の肩に頭を乗せながらも、少し恥ずかしそうに身悶えた。その様子に思わずまた笑った。 俺が少しだけ抱き締めてみるとMr.も恥ずかしそうにしながらもそっと抱きしめ返してきた。 「プレゼント・・・・・・迷惑じゃ、ありませんでした?」 「ああ、嬉しい。両親以外でマトモなプレゼントをくれたのはMr.が初めてだ」 そう言えばMr.は俺から少し身体を離して「私が、初めて」と呟いてあからさまに嬉しそうにした。 表情は仮面に隠れて見えないはずなのに嬉しいという事が伝わってくる。本当に不思議だな。 「Mr.は意外と分かりやすいんだな」 「クロくんの前でだけですよ」 そう言って笑いながら俺に抱き付いてギューッと強く抱きしめてくる。まるで大型犬に擦り寄られているような気分だと思っていれば、不意に数日前の記憶が脳裏を過ぎった。 『クロくん、目を背けたりしないで、しっかりと見てくださいよ。貴方をいじめた人がどういう死に方をするか・・・・・・心に刻み込んでください』 あの時感じたMr.への言い知れぬ恐怖。 「・・・・・・なぁ、Mr.は最近噂になっている悪魔殺しとやらの犯人じゃないよな?」 ピタリとMr.の動きが止まる。 身体がゆっくりと離されて、仮面越しにパッチリ目が合ってしまう。Mr.は笑いながら言った。 「悪魔殺しだなんて・・・・・・まるで私が連続殺人犯のような言い方をしますね。私はただ、貴方の事を悪く言う悪魔達を罰しているだけなんですよ?」 そう平然と言った。 仮面の奥に見える瞳には罪悪感や穏やかな感情はない。今のMr.の瞳に映っているのは、俺が知らなかった、俺に恐怖しか抱かせない『闇』だった。
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