第4章 半悪魔の少女

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俺は行きたくないという気持ちを押し殺して、ベリアルの屋敷に来た。 「黒羽さん、まさか貴方から来てくれるとは思わなかったので凄く嬉しいですけど、その表情から察するに何か頼み事があって来たんでしょう?」 ベリアルが残念そうに溜息をつきながら言った。 「お前の書庫に『カラスの羽が落ちる時』っていうミステリー小説はないか?」 「ありますよ」 そう言ってベリアルは指を鳴らした。 するとベリアルの手元に一冊の本が現れて「どうぞ」とだけ言って本を渡される。 俺は懐かしさに浸る間もなくページを捲っていき途中で止めた。 「この本に載ってる『とある事情からカラスは空を飛ぶことができず、落ち込んでいた。だが、そこにある少年が現れる』というシーン・・・・・・もしかして、この少年を俺に見立てているのか?」 確か、このカラスは鳥の象徴とも言える羽を怪我していて生きる意味を失っていたんだ。 そこで主人公の少年と会って過ごす内に人の心を手に入れ、虐められていた主人公を可哀想だなと思うようになった。そしてある日、不思議な力で人間になる事が出来たカラスは虐められていた主人公を助ける為にイジメっ子達を殺していくという話だったはずだ。 ・・・・・・確かに主人公は俺と似ている。 周りの人間から疎まれ蔑まれ暴力を受ける毎日で辛いはずなのに、それでもニコニコ笑って未来に希望を持っている主人公が大好きだった。 主人公を守る為という純粋な気持ちで殺人を犯すカラスに俺は胸を痛ませた。 そして最後に、追い詰められてしまったカラスは主人公と一緒に死ぬ道を選んだんだ・・・・・・。 「黒羽さん、どういう事ですか?ただ読み返したくなって来たわけじゃないんですよね?」 ベリアルに視線を向けてみると、ベリアルは怪訝な顔をして俺の話に耳を傾けている。 俺は意を決して口を開いた。
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