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ベルという悪魔とベリアルは別室で話すらしく、図書室に押し込まれた。正確には投げられた。
怪我も完治してないのに、と思いながらも静かに立ち上がれば奥に置いてある机に真っ赤な髪色の少女が座っているのが見えて、近付いてみる。
「かなりマイナーな小説を読んでいるな」
「うわっ!?な、なんだ!!?足音くらいはたてて来たらどうなんだ、びっくりするではないか!」
「ん?ああ、悪い」
そう言って頭を撫でてやれば少女はまた少し妙な顔をしたので「どうした?」と聞いてみたがなにか気に障る事を言ったのか黙り込んでしまった。
子供の扱いは分からないな・・・・・・。
いや、もちろん妹は居たんだが、俺は小さい頃の記憶がないからどういう風に子供と接すれば良いのか分からない。やっぱり笑顔とかなのか?
だが俺は笑顔が苦手だ。妹からは「表情筋が皆無の悪役顔」だなんて不名誉な渾名を付けられていた。
「・・・・・・お前、この本知ってるのか?」
「ああ、もちろんだ」
少女が読んでいたのは『悪魔の子』という小説。
普通の家に産まれた少女は、ありふれた、でも、幸せな暮らしをしていた。だが、ある日少女の住んでいたアパートが燃えてしまう・・・・・・それは単なる事故だったにも関わらず、一人だけ無傷で生き残っていた少女に遺族達が刃を向け始め、次第に少女は『悪魔の子』と言われるようになり、日が経つにつれて少女は身体的にも精神的にも蝕まれ遂に街を出た。そして旅先で出会う人間達の良い所や悪い所を見ていきながら少女は成長していく──という物語だったはずだ。
そう言えば少女は同類を見つけた、と言わんばかりにキラキラ瞳を輝かせながら食い付いてくる。
俺は思いの外に食い付いてきた少女に思わず頬が緩むのを感じながら少女の髪をそっと撫でた。
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