第5章 向けられる敵意

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少女──アリスは俺と一緒に暮らす事にした。 またMr.が狙いに来るかもしれないし、あの辺にはアリスを毛嫌いしている悪魔達が多いらしい。 諸々を込めて考えるとやっぱり俺と一緒に住んでいた方が安全だろう。それに俺も寂しくなくなるから一石二鳥だ・・・・・・まぁ、これは秘密だがな。 「や、やっぱり、帰る!」 「は?帰る場所とかないだろ」 門の前まで来て急に逃げようとしたアリスの腕を掴んでやれば、少し潤んだ瞳で睨みつけられた。 えっ、俺こいつを泣かせるような事したか? 驚いて離しそうになったがなんとか平常心を装いながら地面に膝をついてアリスを見つめれば服の袖で涙を拭うと、俯いて、小さな声で呟いた。 「・・・・・・どこに行ったって無駄だ、どうせ半悪魔はどこに行っても半端者だと馬鹿にされる」 今までそんな事を言われてきたのか? ただ人間と悪魔との間に出来た子供だってだけで半悪魔なんて言われ、半端者だと、薄汚い人との子供だと、言われて今まで生きてきてたのか? 「アリス、顔を上げろ」 出来る限り優しく声をかければアリスはゆっくり顔を上げた。瞳には薄い涙の膜が貼ってある。 俺はアリスの頬に手を触れさせ、言った。 「悪魔だろうと人間だろうと半悪魔だろうとそんな事はどうでも良い。俺にとって大事なのはそいつが良い奴かどうか・・・・・・お前は良い奴、だろ?」 「わ、私は、半悪魔なんだぞ?人間でも、悪魔でもない中途半端な存在の私が良い奴だと思うか!?」 涙目になりながら叫ぶように言ってきたアリスにしばらくポカンとした後で俺は微笑んで言った。 「悪魔とか、人間とか、半悪魔とか関係ない。俺が良い奴と思ったらソイツは良い奴、分かったか?」 そう言えばアリスは驚いて固まっていたが、しばらくすると肩を震わせながら大笑いをした。 笑ったのは良いが、変な事でも言ったか? 「ひ〜・・・・・・笑った、笑った!それにしてもお前は意外と傲慢な所があるな!!さっきまではただのお人好しに見えてたけど見直したぞ、クロ!!」 「?そうか、喜んだのなら良かった」 「お前みたいな馬鹿共が沢山居ると考えたらこんな門をくぐるなんて怖くなくなったな!!」 そう言って笑っていたが俺は微かにアリスの手が震えているのに気付いてそっとその手を取った。 ビクリと繋いだ手が震える。 「な、なにする!私は別に緊張なんて・・・・・・」 「俺が緊張してるんだ。お前の緊張が移ったのかもしれないから、俺を助けると思って繋いでくれ」 「と、特別だぞ!!」 ギュッと握り返された手はまだ震えているが少しマシになってて良かったと思っていればアリスは小さな声で「・・・・・・ありがとね、クロ」と呟く。 なんだか返事をしたら駄目な気がして俺は静かに手を握り返してから、扉をゆっくりと開けた。
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