第5章 向けられる敵意

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高校二年生の頃、初めて恋人が出来た。 大人しくて、可愛い、彼女の名前はもう覚えてはいないが彼女は学校内で一番の美人さんだった。 だからあっちから付き合ってくださいと言われた時は断る理由も無いからOKした。暴力や遅刻など彼女が少しでも嫌がる事は全て止めていた。 俺は黙っていれば顔が良い方らしいので、彼女と一緒に居る時は必要最低限は話さなかった。 デート、キス、その先だって、彼女とやった。 柔らかく微笑みかけてくる笑顔が好きだった。 そしていつだったか彼女を迎えに行こうとほんの気まぐれで俺は迎えに行った。そして扉を開ける寸前で話し声が聞こえてきて俺は動きを止めた。 『お前まだ悪魔と付き合ってるんだって?』 『うん、クロくんでしょ〜?良い子だよ』 『マジかよ!惚れた!?』 『惚れてはないかな。だってあの悪魔・・・・・・私の言うこと何でも聞くんだもん、面白くないよ』 『ひっでぇ〜』 『そもそも罰ゲームで告白したんだよ?別れたりしてないのはアレの顔がタイプだからってだけ』 『顔なら俺でも良いんじゃねぇの?』 『ん〜、まぁ良いよ。じゃあ、付き合おっか』 『よし!彼女ゲット〜』 その言葉を聞いたのを最後に俺の記憶は途切れているが、気が付いた時には男は血だらけで倒れていて彼女は顔面蒼白のままで涙を流していた。 俺は彼女の言っていた言葉を思い出して普段から持ち歩いてるナイフをポケットから取り出した。 そして彼女の顔に、浅く、でも、傷がつくくらいの傷跡をつけてからにたりと微笑んで言った。 『お前の顔、タイプじゃないから別れる』 今思えば彼女はモデルの卵だった気がするな。 少しやり過ぎたか、とも思うが、やはり当然だ。 なんと言っても俺の全てを捧げた初の彼女だったのに、その彼女は罰ゲームで俺と付き合ってたんだからな。しかも顔がタイプだからと言って。 腹が立つだろ?殺さなかっただけマシだ。 それなのにあの二人はまるで俺が一方的に殴ったみたいに言って訴えてきた。自分達が悪いのに。 起訴こそされなかったが俺の両親や妹は酷い誹謗中傷を受けて心身共に弱りきってしまった。 『クロは悪くない、だから気にするな』 それからの記憶は・・・・・・ないが、何か大事な事があった気がする。気のせいかもしれないが。 そんな事を考えながら服を着替えようと着ていたシャツを脱ぐ。するとコンコンと控え目はノック音が聞こえてきて俺は溜息混じりに声を返した。
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